酒造りに携わって早くも二十数年が経ちました。当初は蔵人も高齢で、朝早くから夜遅くまで仕事に取り組んでいました。お酒も普通酒が大半で、鑑評会用の吟醸酒は、せっかく造っても店頭に並ぶことのない時代でした。
蔵に入ってからは、詰め口の手伝いと共に営業活動を行っていましたが、日本酒を取り巻く多くの方々と接するうち、その熱い思いに揺さぶられ、自分の酒造りに対する情熱も、日一日と大きく膨らんでいきました。
そうした中、様々な試行錯誤を経て、平成13年、初めて全国新酒鑑評会で金賞を受賞したときの喜びは、今でも忘れることができません。
今後も初心を忘れず、蔵人と和合して、津軽の大地が産み出す美味しいお酒を提供して参りたいと思います。
鳴海醸造店七代目当主 鳴海信宏津軽黒石藩の城下町の風情そのままに、多くの伝統的建築物と「小見世(こみせ)」と呼ばれる木造のアーケードが連なる「中町こみせ通り」。
日本の道百選にも選ばれたこの通りの一角に、文化三年(1806年)より続く造り酒屋、「稲村屋」こと鳴海醸造店があります。
凶作にあっても収穫をもたらした土地の名、「稲村」を屋号に戴いて、以来二百余年にわたり、伝統を受け継ぎ、地域の皆様に親しまれてまいりました。
岩木山と八甲田山、二つの名峰に囲まれた、「北のまほろば」津軽。雄大な自然が、豊かな実りをもたらしてくれます。
青森県産のお米と酵母、そして山々の雪解け水に由来する、まろやかな伏流水。
ふるさとの恵みが、津軽衆の誇りです。だから、私たちの造る日本酒を通じて、少しでも津軽を知ってほしい。青森県の原料にこだわる理由が、そこにあります。
酒造りは、チームプレイです。毎年シーズンになると、顔なじみのベテラン蔵人から、将来を担う若手のルーキーまで、続々と蔵に集まってきます。
共に働き、共に生活する中で、互いを思いやり、心を合わせることが、どれだけ大切なことか。そして、それが、如何に商品の出来を左右するか。
だから、この蔵の合言葉は、『和合』です。お米と、酵母と、水が、一つになって、おいしい日本酒ができるように。